Mount Eerie『A Crow Looked At Me』

 本作は2016年8月31日から12月6日にかけて、Phil Elverumという一人の男が、亡くなった妻の部屋で妻の楽器を用いて録音した作品である。アルバムのライナーにはPhilの本作リリースにあたっての動機が示されている。そこでは「ここまで情報をシェアするのか?」というSNS全盛の社会への疑問と、自身や家族の(特にアートや音楽等の共有するには「あまりに特別」な物事に対する)プライバシーのバリアの重要性が語られるが、その後には妻の死によって彼の内面に生じた変化が綴られる

彼女は家で亡くなり、僕は誰にも属さなくなった。僕の内面の瞬間がまるで公共の財産のように感じられた。自分自身のあるいは個人的な好みや曲を持つこともできるというアイディアが病院への運転手、介護人、子育て人、嘆き悲しむ人になる前のもっと自己中心的だった時代の遺物の、ある馬鹿らしい古いアイディアをむしばんでいった。(国内盤ライナーより)

  彼は動機について最後にこのように結ぶ。

彼女を愛していると言っている自分の声を増殖させるために、これらの曲を書き、世間に発表する。そのことを知って欲しい。(国内盤ライナーより)

 

【感想】
アルバムは「Death is real」というセンテンスから幕を開ける。本作を貫くテーマが"死"であることは明らかだが、このセンテンスは"死"に対するPhilの姿勢を最も端的に表現しているように感じられる。
 近年リリースされた"死"をテーマにした作品群としてはSufjian Stevensの『Carrie & Lowell』やSun Kil Moonの『Benji』が記憶に新しい。Sufjian Stevensの実母と義父の名が冠された『Carrie & Lowell』では、現実と神秘の世界を行き来するような宗教性/神話性の高い世界が(特に歌詞を中心に)全編を通して形成されている。そしてその詩的な飛躍には言うまでもなく、多少なりともサウンドのダイナミクスが添えられる。『Carrie & Lowell』という作品の中で、"死"という不可視で曖昧な概念は、作り手の意思と共に「現実」の範囲を超えて伸縮し、飛躍していくような感覚を聴き手に感じさせていた。

Sufjan Stevens, "The Only Thing" (Official Audio) - YouTube

また、Sun Kil Moonの『Benji』はMark Kozelekオハイオ州で遭遇した"死"をテーマにした作品であり、(一曲目の「Carissa」において唄われる「Meant to give her life poetry To make sure her name is known across every sea」という歌詞は『A Crow Looked At Me』の制作動機と重なる点が認められる。)、アルバム一枚を通して描かれる多様な"死"は一種の群像劇の様相を呈している。このアルバムで唄われた様々な"死"のあり方は、その全てが交錯しあいとても立体的な空間を立ち上げているように感じられる。

Sun Kil Moon - Carissa - YouTube

 一方で、『A Crow Looked At Me』の場合はどうだろうか。その詩の中に描かれるのは彼自身と彼の娘、そして今は亡き者となった妻の面影にすぎない。先に挙げた二作品とは異なり、描かれるたった一つの"死"は伸縮も、飛躍も、交錯も、昇華もされぬままあるがままの現実として凝視される。次元的な拡がりも深まりも認めず、"死"を現実として見つめる姿勢はそのまま簡素(あまりにも地味)ともいえる演奏に繋がる。全編明るさや希望を感じさせる音色は全くといっていいほど用いられず、(「Toothbrush/Trash」などの後半のように)例え用いられたとしても「It does not feel good.」という現実への立ち返りによってその先が閉ざされる。この作品は現実の範囲を彷徨するばかりで救いが訪れる瞬間がない。そこには何の解決もなく、解決への予兆すら存在しない。その苦しいばかりの瞬間を切り取ることにどれほどの信念を傾けただろう。浮かんでくる逃避の手段を断ち切る、断ち切らざるを得ない絶望はどれほど深いものだっただろう。

 「死が現実」であるという感覚、もっと言えば「死が、たかが現実と並べられてしまう」悲愴は、おそらく全ての人の理解を得るものではないはずだ。死は特別なものではないし、特別なものではないからこそ苦しいのだという感覚を、この作品はたった一つの"死"に真っ向から向かい合うことで、真摯に、切実に伝えている。

"Real Death" by Mount Eerie (from "A Crow Looked At Me") by P.W. Elverum & Sun, ltd. | Free Listening on SoundCloud

A Crow Looked At Me

A Crow Looked At Me

 

 

年間ベストアルバム(2016)

評価軸を度外視した、超自己満ランキングなので、そこらへんはご容赦いただけると助かります。とりあえず、次点5作品とベスト30で組んでみました。

坂本慎太郎 / できれば愛を

ソロ作の中で一番ポップだった気がする。こちらも音数を減らしつつも、揺れるスティールギターの音に奥行きがある聴いてて気持ちよい一枚だった。歌詞が若干パーソナルな内容になったのも個人的には◎。諦観が目立つ近作で確立した世界観を、根本から揺るがすスケールの次作を待望している。

 

Omar Rodriguez-Lopez / Umbrella Mistress

オマーほど弾いてる姿でワクワクさせてくれるギタリストはいないと思っていたが、まさかドリームポップ路線でもキュンとさせられるとは...!今年どん引きするぐらいのペースでリリースしていたソロアルバムは大きく分けるとエレクトロ系とドリームポップ系に分かれていると感じたが、その中でも最も聴きやすいのは本作だったのでこれで。毎月の大きな楽しみだった。

 

Brian Eno / The Ship

あんまり眠れない夜に、自分の頭の中でずっと「あ~~~~~~~」って言うといい、と聴いたことがあるが、それを音楽にするとこうなる(最大級の褒め言葉)。ちょうど仕事の都合で方丈記をイヤってほど読みこんだんですが、この音楽には無常観を感じたなぁ。ヴェルヴェッツの「I'm Set Free」がラストにくるあたり、ちょっと救いが欲しそうなのも人間くさくていいじゃない。

 

V.A / Day of The Dead

USインディのオールスター集結!といった趣のトリビュート。メンツみるだけでも最高だが、5枚組という超ボリューム自体がもうデッドへのリスペクトの表明に思えてニヤニヤ。聴き通すのに時間はかかったが、相当楽しい企画だった。

 

Deftones / Gore

"デフトーンズ"というジャンルを更新した一枚。crossesなど、チノのサイドプロジェクトの影響がバンドの音楽性をさらに深化させていて、メタルからは離れたものの、今までで最も聞き飽きない一作になっていると思う。ノットフェスばかり出てないで、単独をすること!

―― ここから順位がつけられました。――

30:Lionlimb / Shoo

エリオットスミスがR&Bに接近した、といえばいいのか、ギターの代わりにドラムを叩くエリオットといった趣の一枚。アルバム全体を通しての起伏のなさが気にはなるが、ここまで彼の姿がダブるのは自分が惹き付けられたからなんだろうなぁ。自作の更なるオリジナリティの開花が楽しみ。

 

29:Klan Aileen / Live at Milkyway

フルアルバムではなく、あえてカセットで販売されていたライブ盤を。アルバム完成に至る前のプロトタイプ的な曲群の、全く角が削れていない感じがド頭に突き刺さる。このライブからアルバム発売、アルバム発売から渋谷でのワンマンと、バンドの目指す音像が目まぐるしく変化していく過程が早すぎて恐ろしい。

 

28:The Anchoress / Confessions of a Romance Novelist

今年はポールドレイパーがEPを二枚出して(内容も良いんです!)Mansunファン歓喜だったのですが、プロデュースにまわった本作も節々にポール節が見えるのですごくニヤニヤできる。Vo.の表現力も高く、ダークな絵本を読んでるみたいなスリルある一枚。

 

27:Dinosour Jr. / Give a Glimpse of What Yer Not

ダイナソーの現役感バリバリの一枚。キャリアの中でもトップクラスにポップなメロディ、ハイファイなサウンドで、ここからさらに新規層が増えるんじゃ?ってくらいの好盤だった。なによりライブが最高の思い出。ギターの音で頭ぶん殴られた。

 

26:Itasca / Open To Chance

閉塞感のあるアシッドフォークも大好きだが、開放感のあるアシッドフォークはさらに最高。ジャケットのように牧歌的で暖かみのあるサウンドに、優しい歌声が響く。派手でもなく新しくもない音楽に何度癒やされたことか。

 

25:Teenage Fanclub / Here

はじめてTFCのアルバムをリアルタイムで発売日に買えた。作品を追うごとに、成熟して音が丸っこくなっていく近作の流れに、少し退屈さを感じていたが、本作はメロディの良さを一際感じて、バンドと一緒に歳をとる充実感を教えてもらった。

 

24:OGRE YOU ASSHOLE / ハンドルを放す前に

「オウガの引き算もとうとうここまできたか・・・」な一枚。最小限の音数で人を揺らす、"サルでも分かるリズム・グルーヴ入門"みたいな一枚でした。坂本慎太郎ソロとの共通点も多いが故に、見れるうちに見とかないとなと思う。末永く良い音楽を...。

 

23:Modern Baseball / Holy Ghost

今年もEMOは凄かったが、その中で一番「蒼かった」のは彼らかなと思う。Wedding Singerのイントロのリフが鳴った瞬間の高揚感よ!個人的に歌メロがジャックスマネキンに近い感じがすごくツボだったなぁ。

 

22:Anderson .Paak / MALIBU

今や活動を追うのが困難なほどに様々なアーティストから引っ張りだこのアンダーソンパック。音源の完成度がものすごく高いのは言うまでもなく、来日公演では、あの音源の完成度の高さに足し算する余地が隠されていたことに愕然とした。センス良すぎだろ...。

 

21:American Football / American Football

OWENの新譜が良かったこともあって、ある種の不安と共に聴いた本作だが、聴けば聴くほど良さが染み渡る...。最初は前作とのミックスの違いに戸惑ったが、唄が前面に出せるようになったのもOWENをはじめとした(OWENの新譜だが、こちらもかなり良盤でした。特にSettlle Downなんかこれ、新たな名曲誕生といってもよいのでは。)価値の蓄積があってこそ。みんなを幸せにする2ndでした。

 

20:Hurry / Guided Meditation

スリーピースで、毒にも薬にもならないギターポップを楽しそうにやられるのは胸にクる。Vo.の声が好きなんだな。メディアには全く取り上げられなかったが、とにかく胸にクるグッドメロディに溢れた作品だった。大好きだから三曲貼っちゃう。

 

19:White Lung / Paradice

とにかくアルバム発売に先駆けて公開されてた曲の勢いだけでノックアウト確定だったのに、それが全編ぶっ通しとなるとズルいとしか言い様がない。COTD的なメタルめいたリフの疾走感が爽快。

 

18:Blood Orange / Freetown Sound

このアルバムは「Augustine」の一曲で足れりといった感じ(一番好きなのは「But You」だが...)。勿論他の曲も素晴らしいが、ポリティカルなメッセージの裏に隠された超ポップな歌メロ、ドリームポップ的な奥行きそれらが高度に均衡を保っている音像に衝撃を受けた。ライブも素晴らしいパフォーマンスだった。

 

17:Drugdealer / The End of Comedy

Mike Collinsのソロプロジェクト。ゲストにWaynes BloodやAriel Pinkを迎えたり、表題曲のPVにはMac DeMarcoが登場したりと地味に豪華なアルバム。そこらへん界隈好きな人には間違いないかと。何もやる気のおきない休日にとにかく合ってしまうユルさ。「Real World」が今年のベストトラックでかなり上位にくるくらい好きな曲。

 

16:Wilco / Shmilco

優しい音楽の中に、職人たちのイタズラ心がチラチラ垣間見えるあたり、すごく好みな一枚でした。ジャケットはもうこれコミカル部門では今年ベストでしょう。個展開かれることを祈るのみ。

 

15:Whitney / Light Upon The Lake

様々なメディア、ブログ等で絶賛されてる本作に今更付け足す所見などない。カントリーとソウルの融合は盲点だった...。深い音楽的素養を万人に聴きやすい形に落とし込んだ着想の柔らかさに脱帽。タイムレスメロディです。

 

14:トクマルシューゴ / TOSS

特有のおもちゃ箱感はそのままに、バンド感が圧倒的に増した傑作だった。Hikagenoとか、これまでの作品の中で未到達の領域に思いっきり連れて行ってくれる飛び抜け感がたまらん!Cheese Eyeとか、トムとジェリー好きにはもう落涙ものの完成度...!

 

13:Lambchop / Flotus

一曲目、「In Care Of 8675309」をはじめとして、Vo.のオートチューンや明らかに増したエレクトロ色の強さ等、これまでの作品と全く違う感触。しかしそれらの要素が逆に彼らの音楽の、人間の声の暖かみを強調しているような印象。何年後も聴く愛聴盤になるだろう。

 

12:Moe and Ghosts×空間現代

今年のHip Hop/Rap周りのアルバムはものすごく豊作だったと思うのですが、まさか日本からこんなラップが突然変異したような音楽が産まれるとは...!何回も聴き通してようやくグルーヴを掴める、ラップ版魔界村みたいな作品。Zazen Boys好きに是非オススメしたい。

 

11:Andy Shauf / The Party

音へのこだわりが抜きんでているアルバムだと思った。特にこういったパーソナルな音楽では引っ込めがちな低音を割と強く押し出しているのが今風で斬新。歌詞の静かに狂っている世界観が寂しくて寂しくて、本当に惹き付けられた。

 

10:Twin Peaks / Down In Heaven

こいつらのバカさにどれだけ元気をもらっただろうか、音楽をやっている/聴いている時くらいは子供のままでもいいよねと切に思える。友達になりたい。いつでも気持ち良さそうに唄ってくれるバンドは裏切らない。音源も最高だが、ライブも観てて笑える。

 

09:Jeff Rosenstock / WORRY.

パワーポップ、ポップパンク、ハードコア、スカといったあらゆるジャンルを横断しながらバカ騒ぎの楽しさを一緒に味あわせてくれるアルバム。初期WEEZERに近い歌メロのまわし、バカさの強調のために使われるkey.など、一曲聴いたら絶対最後まで通しちゃう魔力。

 

08:Bon Iver / 22,A Million

先行トラックで「なんだこれ」と思ったが、蓋を開けてみると、アルバム三作(間にEP一枚)の流れに必然性を感じさせる名盤だった。Bon Iverの音楽から怒りが表現されるのは、いつも優しい人が急にキレたみたいな、「ホントに切迫してんだ」って感じがしたなぁ。33 God以降の混沌とした世界から逃れようとするような曲群がすごく響いた。この曲は個人的に断トツで今年のベストトラック。

 

07:Psychic Ills / Inner Journey Out

骨を抜かれたBRMC、宇宙までは行けないSpiritualized、つまりジザメリの5枚目みたな作品なんですが、こういうの堪らん人にはホント堪らん。自分の中の物事の捉え方の温度に、物凄く近い気がして、一人の夜にすごい聴いてた。

 

06:Jesu/Sun Kil Moon / S.T.

Jesutin Broadrickの一本一本の繊維がほどけるような轟音ギターに、Mark Kozelekのボヤキが乗っかっている。これだけなのに(これだけだからか)やけに感動する一枚。モノクロのジャケも内容にぴったり合致している。今年は聴いてて死を思わせる、灰色の音像の一枚が多かったなぁ。

 

05:Mikael Lind / Intensions and Variations

EPだけど素晴らしかったので入れちゃう。今年聴いたアンビエント作品の中で、一番「流れていく/流れてくる感」があったのはこれかなぁ。河の中を揺蕩うような、そんな感覚になるアンビエント尊い。あらゆるシチュエーションから「今ここではないどこか」に連れて行ってくれる最高の一枚。

 

04:The Hotelier / Goodness

このアルバム、冒頭に詩の朗読があって「I see the moon.The moon sees me.That's enough.」という一節を終えて曲に入るんですけど、これかっこよすぎないか...!?EMOは祈りです、僕も祈ります。という気分にさせてくれる最高に感傷的な一枚。

 

03:Pinegrove / Pinegrove

今年聴いてて一番「バンドっていいよな!」となったインディロックはこの一枚。適度に個性的なVo.は音程という面でライブでも安定していて、メンバーの出音への拘りも強く感じる。来日してくれたら是非観たいなぁと思うばかり。自分のウジウジした生活に、最もフィットする形でエールを送ってくれた作品。

 

02:John K. Samson / Winter Wheat

この一枚がニールヤングの「渚にて」に影響を受けていることをフォロワーさんに教えてもらってから、ニールヤング熱がスゴイ。そしてニールヤング熱が、この作品にまた還っていく。ニールヤングといえば、リンクレイターの新作「エヴリバディ・ウォンツ・サム!」の主人公のジェイク君のお気に入りの一枚がニールヤングのベストで、「あ~ただの体育会系じゃないんだな」って分かるのよかったですよね。...このアルバムに関していえば、聴けば分かるとしかいいようがない、それだけ人間の本質的な部分に届く、暖かくて優しい良い音楽。昨年のスフィアン同様、今年最もパーソナルな部分に響いた一枚だと思う。

 

01:Radiohead / A Moon Shaped Pool

なんだかんだいってDaydreamingが公開された瞬間「あぁ、今年はこの曲に象徴されるな」と思った自分がいた。サマーソニックでのライブも凄まじかったが、そんなのは関係なしに、バンドという共同体が互いに作用しあってここまでの芸術を産むことができるのかと、ここまで他者を置き去りにして高い地点まで昇れるのかと、完全にノックアウトされた。

以上の35枚が個人的に愛聴したアルバムたちでした。来年はどんな音楽が聴けるのか、良い音楽に相応しい生活を送れるよう、精進いたします。ここまで読んで/聴いてくれた方どうもありがとうございました。

Hurry『Guided Meditation』

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[Tracklist]

  1. Nothing To Say
  2. When I’m With You
  3. Fascination
  4. Love Is Elusive
  5. Shake It Off
  6. Sinking Feeling
  7. Telepathic
  8. Under Her Thumb
  9. I Wanna Be You
  10. Nothing To Say (Bonus Track)

Hurry - Guided Meditation by Lame-O Records | Free Listening on SoundCloud

フィラデルフィアの3ピースバンドHurryがリリースした2ndアルバム。このアルバムがTFCにも通じるようなグッドメロディのギターポップで、全く疲れずに延々聴けるので今年出たアルバムの中でもかなりお気に入り。全く新しいことはやってないものの、だからこそ直球勝負な潔い印象を受ける。

2014年リリースの1st『Everything / Nothing』のディストーションがかったいかにもな宅録パワーポップサウンドも好みだったが、今回はギターポップ寄りの柔らかいサウンドに寄ってメロディの良さがより際立ったと思う。

Vo.の声が少年っぽくて、自分が好きなギターポップに共通する放課後のワクワク感的なものがビンビン伝わってくるじゃないの!これからも好きな音楽ずっと続けて欲しいなぁ。

年間ベストアルバム(2015)

2015年のアルバムもそろそろ出そろってきたので、年間ベストアルバムを考えてみました。とりあえず10位までで。

 
10:Salad Boys『Metalmania』

部屋で横たわって75~86点くらいの曲しか入ってないアルバムをチンタラ聴こうぜ協会会長である僕イチオシのSalad Boys。名前が最高だと思います。12弦ギターのキラキラした音が、何もやる気の起きない休みの日を肯定してくれます。スリーピース特有の音の隙間を埋めない感じが好みでした。

9:Destroyer『Poison Season』

ホーンセクションが入ってきたときの報われた感が異常に気持ち良いです。なんかこうインディ特有のウジウジ感と、ホーンの解放的なベクトルのバランス感覚が最高だと思います。それぞれのパートの音がすごい気持ち良くて、聴いててスーッとするアルバムでした。

8:Widowspeak『All Yours』

良いアルバムって一音目で「うわぁ~ッ...」てなるじゃないですか。2015年で最高の一音目のアルバムはコレだと思いました。このギターの最初の一音を聞きたいがためにアルバムを再生することもしばしば。勿論その後の曲も良いです。ウィスパーにならない程度の温度感の女性Vo.も最高です。

7:Mikal Cronin『MCⅢ』

前作のMCⅡも相当傑作でむこうの方がノイジーで好みではありましたが、KEXPでの映像を見て3rdアルバムのライブ映え具合に愕然とさせられました。今作はストリングスにスポットを当てた曲群がとにかくポップでキラキラしていて、ただただワクワクさせられます。マジでTy Segall連れて来日しないかなと、ずっと前から言ってます本当に。

6:吉田一郎不可触世界『あぱんだ』

Zazen Boys吉田一郎が14歳の頃からストックしていたフレーズを再構築して作った1stソロアルバム。近年のZazen的なシンセを中心に据えた路線は予想出来ても、ここまでヒップホップと都会派チルウェイブ的な路線で来るとは思っていなかったです。大して韻を踏みに行ってなさそうなラップの語感の良さが異常に耳に残ります。曲の幅が本当に広くアルバム全体の統一感はないものの、だからこそ2ndがすごい面白くなりそうで超期待してしまう自分がいます。

5:Titus Andronicus『The Most Lamentable Tragedy』

古き良き音楽を、楽しそうにやってるから超好きです。パワーポップの源流からモッズからパンクから色んな要素を取り込んだご機嫌な音楽が続きに続いて、色々インタールードとかあれどアルバム29曲とかいうボリュームはもう笑うしかありません。自分たちの好きな音楽をホントに楽しそうに演奏してるのは憧れます。

4:Girl Band『Holding Hands With Jamie』

なんだろう。聴いててスリルが半端なかったです。「来るぞ...来るぞ...来ないのかよ!!」ってなったり「来ないよね...って来るのかよ!」ってなったり、良い意味でサービス精神ゼロの曲の作り方に翻弄されてしまいました。METZとか今年もアツかったけど、衝撃という点ではGirl Bandだったかなぁと思いこの位置に。分かりやすいノイバウテン的な感じのサウンドです。

3:Jim O'rourke『Simple Songs』

貫禄の作品だったように思います。『Eureka』を失敗作だと思っている、というジムオルーク完全読本のインタビュー通り、表現することへの恥であったり内省的な部分を敢えて排除したような曲群はホントに考えさせられました。ライブではギターが前に出まくりで痺れまくりでした。

2:Courtney Barnett『Sometimes I Sit And Think And Sometimes I Just Sit』

マジでカッコいいです。ルックスからサウスポー手弾きの演奏スタイルまで、2015年の新たなスター爆誕しとるやないかと、ヒシヒシと感じました。はやく2ndを...!

1:Sufjan Stevens『Carrie & Lowell』

今年も素晴らしいアルバムが沢山出ましたが、聴いていて泣きそうになったのはこのアルバムだけでした。歌詞が分からないけど泣きそうになって、歌詞が分かってもっと泣きそうになりました。今年は個人的に色んなことがあったけど、このアルバムがあったからこそ救われたと思います。生涯聴くであろう一枚でした。

今年も良い音楽が沢山あって楽しかったです。