年間ベストアルバム(2016)

評価軸を度外視した、超自己満ランキングなので、そこらへんはご容赦いただけると助かります。とりあえず、次点5作品とベスト30で組んでみました。

坂本慎太郎 / できれば愛を

ソロ作の中で一番ポップだった気がする。こちらも音数を減らしつつも、揺れるスティールギターの音に奥行きがある聴いてて気持ちよい一枚だった。歌詞が若干パーソナルな内容になったのも個人的には◎。諦観が目立つ近作で確立した世界観を、根本から揺るがすスケールの次作を待望している。

 

Omar Rodriguez-Lopez / Umbrella Mistress

オマーほど弾いてる姿でワクワクさせてくれるギタリストはいないと思っていたが、まさかドリームポップ路線でもキュンとさせられるとは...!今年どん引きするぐらいのペースでリリースしていたソロアルバムは大きく分けるとエレクトロ系とドリームポップ系に分かれていると感じたが、その中でも最も聴きやすいのは本作だったのでこれで。毎月の大きな楽しみだった。

 

Brian Eno / The Ship

あんまり眠れない夜に、自分の頭の中でずっと「あ~~~~~~~」って言うといい、と聴いたことがあるが、それを音楽にするとこうなる(最大級の褒め言葉)。ちょうど仕事の都合で方丈記をイヤってほど読みこんだんですが、この音楽には無常観を感じたなぁ。ヴェルヴェッツの「I'm Set Free」がラストにくるあたり、ちょっと救いが欲しそうなのも人間くさくていいじゃない。

 

V.A / Day of The Dead

USインディのオールスター集結!といった趣のトリビュート。メンツみるだけでも最高だが、5枚組という超ボリューム自体がもうデッドへのリスペクトの表明に思えてニヤニヤ。聴き通すのに時間はかかったが、相当楽しい企画だった。

 

Deftones / Gore

"デフトーンズ"というジャンルを更新した一枚。crossesなど、チノのサイドプロジェクトの影響がバンドの音楽性をさらに深化させていて、メタルからは離れたものの、今までで最も聞き飽きない一作になっていると思う。ノットフェスばかり出てないで、単独をすること!

―― ここから順位がつけられました。――

30:Lionlimb / Shoo

エリオットスミスがR&Bに接近した、といえばいいのか、ギターの代わりにドラムを叩くエリオットといった趣の一枚。アルバム全体を通しての起伏のなさが気にはなるが、ここまで彼の姿がダブるのは自分が惹き付けられたからなんだろうなぁ。自作の更なるオリジナリティの開花が楽しみ。

 

29:Klan Aileen / Live at Milkyway

フルアルバムではなく、あえてカセットで販売されていたライブ盤を。アルバム完成に至る前のプロトタイプ的な曲群の、全く角が削れていない感じがド頭に突き刺さる。このライブからアルバム発売、アルバム発売から渋谷でのワンマンと、バンドの目指す音像が目まぐるしく変化していく過程が早すぎて恐ろしい。

 

28:The Anchoress / Confessions of a Romance Novelist

今年はポールドレイパーがEPを二枚出して(内容も良いんです!)Mansunファン歓喜だったのですが、プロデュースにまわった本作も節々にポール節が見えるのですごくニヤニヤできる。Vo.の表現力も高く、ダークな絵本を読んでるみたいなスリルある一枚。

 

27:Dinosour Jr. / Give a Glimpse of What Yer Not

ダイナソーの現役感バリバリの一枚。キャリアの中でもトップクラスにポップなメロディ、ハイファイなサウンドで、ここからさらに新規層が増えるんじゃ?ってくらいの好盤だった。なによりライブが最高の思い出。ギターの音で頭ぶん殴られた。

 

26:Itasca / Open To Chance

閉塞感のあるアシッドフォークも大好きだが、開放感のあるアシッドフォークはさらに最高。ジャケットのように牧歌的で暖かみのあるサウンドに、優しい歌声が響く。派手でもなく新しくもない音楽に何度癒やされたことか。

 

25:Teenage Fanclub / Here

はじめてTFCのアルバムをリアルタイムで発売日に買えた。作品を追うごとに、成熟して音が丸っこくなっていく近作の流れに、少し退屈さを感じていたが、本作はメロディの良さを一際感じて、バンドと一緒に歳をとる充実感を教えてもらった。

 

24:OGRE YOU ASSHOLE / ハンドルを放す前に

「オウガの引き算もとうとうここまできたか・・・」な一枚。最小限の音数で人を揺らす、"サルでも分かるリズム・グルーヴ入門"みたいな一枚でした。坂本慎太郎ソロとの共通点も多いが故に、見れるうちに見とかないとなと思う。末永く良い音楽を...。

 

23:Modern Baseball / Holy Ghost

今年もEMOは凄かったが、その中で一番「蒼かった」のは彼らかなと思う。Wedding Singerのイントロのリフが鳴った瞬間の高揚感よ!個人的に歌メロがジャックスマネキンに近い感じがすごくツボだったなぁ。

 

22:Anderson .Paak / MALIBU

今や活動を追うのが困難なほどに様々なアーティストから引っ張りだこのアンダーソンパック。音源の完成度がものすごく高いのは言うまでもなく、来日公演では、あの音源の完成度の高さに足し算する余地が隠されていたことに愕然とした。センス良すぎだろ...。

 

21:American Football / American Football

OWENの新譜が良かったこともあって、ある種の不安と共に聴いた本作だが、聴けば聴くほど良さが染み渡る...。最初は前作とのミックスの違いに戸惑ったが、唄が前面に出せるようになったのもOWENをはじめとした(OWENの新譜だが、こちらもかなり良盤でした。特にSettlle Downなんかこれ、新たな名曲誕生といってもよいのでは。)価値の蓄積があってこそ。みんなを幸せにする2ndでした。

 

20:Hurry / Guided Meditation

スリーピースで、毒にも薬にもならないギターポップを楽しそうにやられるのは胸にクる。Vo.の声が好きなんだな。メディアには全く取り上げられなかったが、とにかく胸にクるグッドメロディに溢れた作品だった。大好きだから三曲貼っちゃう。

 

19:White Lung / Paradice

とにかくアルバム発売に先駆けて公開されてた曲の勢いだけでノックアウト確定だったのに、それが全編ぶっ通しとなるとズルいとしか言い様がない。COTD的なメタルめいたリフの疾走感が爽快。

 

18:Blood Orange / Freetown Sound

このアルバムは「Augustine」の一曲で足れりといった感じ(一番好きなのは「But You」だが...)。勿論他の曲も素晴らしいが、ポリティカルなメッセージの裏に隠された超ポップな歌メロ、ドリームポップ的な奥行きそれらが高度に均衡を保っている音像に衝撃を受けた。ライブも素晴らしいパフォーマンスだった。

 

17:Drugdealer / The End of Comedy

Mike Collinsのソロプロジェクト。ゲストにWaynes BloodやAriel Pinkを迎えたり、表題曲のPVにはMac DeMarcoが登場したりと地味に豪華なアルバム。そこらへん界隈好きな人には間違いないかと。何もやる気のおきない休日にとにかく合ってしまうユルさ。「Real World」が今年のベストトラックでかなり上位にくるくらい好きな曲。

 

16:Wilco / Shmilco

優しい音楽の中に、職人たちのイタズラ心がチラチラ垣間見えるあたり、すごく好みな一枚でした。ジャケットはもうこれコミカル部門では今年ベストでしょう。個展開かれることを祈るのみ。

 

15:Whitney / Light Upon The Lake

様々なメディア、ブログ等で絶賛されてる本作に今更付け足す所見などない。カントリーとソウルの融合は盲点だった...。深い音楽的素養を万人に聴きやすい形に落とし込んだ着想の柔らかさに脱帽。タイムレスメロディです。

 

14:トクマルシューゴ / TOSS

特有のおもちゃ箱感はそのままに、バンド感が圧倒的に増した傑作だった。Hikagenoとか、これまでの作品の中で未到達の領域に思いっきり連れて行ってくれる飛び抜け感がたまらん!Cheese Eyeとか、トムとジェリー好きにはもう落涙ものの完成度...!

 

13:Lambchop / Flotus

一曲目、「In Care Of 8675309」をはじめとして、Vo.のオートチューンや明らかに増したエレクトロ色の強さ等、これまでの作品と全く違う感触。しかしそれらの要素が逆に彼らの音楽の、人間の声の暖かみを強調しているような印象。何年後も聴く愛聴盤になるだろう。

 

12:Moe and Ghosts×空間現代

今年のHip Hop/Rap周りのアルバムはものすごく豊作だったと思うのですが、まさか日本からこんなラップが突然変異したような音楽が産まれるとは...!何回も聴き通してようやくグルーヴを掴める、ラップ版魔界村みたいな作品。Zazen Boys好きに是非オススメしたい。

 

11:Andy Shauf / The Party

音へのこだわりが抜きんでているアルバムだと思った。特にこういったパーソナルな音楽では引っ込めがちな低音を割と強く押し出しているのが今風で斬新。歌詞の静かに狂っている世界観が寂しくて寂しくて、本当に惹き付けられた。

 

10:Twin Peaks / Down In Heaven

こいつらのバカさにどれだけ元気をもらっただろうか、音楽をやっている/聴いている時くらいは子供のままでもいいよねと切に思える。友達になりたい。いつでも気持ち良さそうに唄ってくれるバンドは裏切らない。音源も最高だが、ライブも観てて笑える。

 

09:Jeff Rosenstock / WORRY.

パワーポップ、ポップパンク、ハードコア、スカといったあらゆるジャンルを横断しながらバカ騒ぎの楽しさを一緒に味あわせてくれるアルバム。初期WEEZERに近い歌メロのまわし、バカさの強調のために使われるkey.など、一曲聴いたら絶対最後まで通しちゃう魔力。

 

08:Bon Iver / 22,A Million

先行トラックで「なんだこれ」と思ったが、蓋を開けてみると、アルバム三作(間にEP一枚)の流れに必然性を感じさせる名盤だった。Bon Iverの音楽から怒りが表現されるのは、いつも優しい人が急にキレたみたいな、「ホントに切迫してんだ」って感じがしたなぁ。33 God以降の混沌とした世界から逃れようとするような曲群がすごく響いた。この曲は個人的に断トツで今年のベストトラック。

 

07:Psychic Ills / Inner Journey Out

骨を抜かれたBRMC、宇宙までは行けないSpiritualized、つまりジザメリの5枚目みたな作品なんですが、こういうの堪らん人にはホント堪らん。自分の中の物事の捉え方の温度に、物凄く近い気がして、一人の夜にすごい聴いてた。

 

06:Jesu/Sun Kil Moon / S.T.

Jesutin Broadrickの一本一本の繊維がほどけるような轟音ギターに、Mark Kozelekのボヤキが乗っかっている。これだけなのに(これだけだからか)やけに感動する一枚。モノクロのジャケも内容にぴったり合致している。今年は聴いてて死を思わせる、灰色の音像の一枚が多かったなぁ。

 

05:Mikael Lind / Intensions and Variations

EPだけど素晴らしかったので入れちゃう。今年聴いたアンビエント作品の中で、一番「流れていく/流れてくる感」があったのはこれかなぁ。河の中を揺蕩うような、そんな感覚になるアンビエント尊い。あらゆるシチュエーションから「今ここではないどこか」に連れて行ってくれる最高の一枚。

 

04:The Hotelier / Goodness

このアルバム、冒頭に詩の朗読があって「I see the moon.The moon sees me.That's enough.」という一節を終えて曲に入るんですけど、これかっこよすぎないか...!?EMOは祈りです、僕も祈ります。という気分にさせてくれる最高に感傷的な一枚。

 

03:Pinegrove / Pinegrove

今年聴いてて一番「バンドっていいよな!」となったインディロックはこの一枚。適度に個性的なVo.は音程という面でライブでも安定していて、メンバーの出音への拘りも強く感じる。来日してくれたら是非観たいなぁと思うばかり。自分のウジウジした生活に、最もフィットする形でエールを送ってくれた作品。

 

02:John K. Samson / Winter Wheat

この一枚がニールヤングの「渚にて」に影響を受けていることをフォロワーさんに教えてもらってから、ニールヤング熱がスゴイ。そしてニールヤング熱が、この作品にまた還っていく。ニールヤングといえば、リンクレイターの新作「エヴリバディ・ウォンツ・サム!」の主人公のジェイク君のお気に入りの一枚がニールヤングのベストで、「あ~ただの体育会系じゃないんだな」って分かるのよかったですよね。...このアルバムに関していえば、聴けば分かるとしかいいようがない、それだけ人間の本質的な部分に届く、暖かくて優しい良い音楽。昨年のスフィアン同様、今年最もパーソナルな部分に響いた一枚だと思う。

 

01:Radiohead / A Moon Shaped Pool

なんだかんだいってDaydreamingが公開された瞬間「あぁ、今年はこの曲に象徴されるな」と思った自分がいた。サマーソニックでのライブも凄まじかったが、そんなのは関係なしに、バンドという共同体が互いに作用しあってここまでの芸術を産むことができるのかと、ここまで他者を置き去りにして高い地点まで昇れるのかと、完全にノックアウトされた。

以上の35枚が個人的に愛聴したアルバムたちでした。来年はどんな音楽が聴けるのか、良い音楽に相応しい生活を送れるよう、精進いたします。ここまで読んで/聴いてくれた方どうもありがとうございました。