年間ベストアルバム(2018)

シングルも込みのベスト30。順位づけに意味は無く、感覚でつけてます。

 

30.『Point of This』『Judy's Lament』/ Yakima

Glaswegian dreamers Yakima present their beautiful alt-rock single 'Judy's Lament'

グラスゴーインディバンドYakimaの今後が気になる。今年リリースした2曲を聴くだけで、彼らが”USインディの良心”の系譜に名を連ねるような優れた感性を持つことを確信。このバンドを知ったきっかけはHappyness(ロンドンのインディバンド)のツイートだったが、アメリカから離れた地でUSインディ的な音像が正当に継承され発展を遂げている点はすごく興味深い。1stアルバムに超期待。

Point Of This by Yakima | Free Listening on SoundCloud

Judy's Lament by Yakima | Free Listening on SoundCloud

 

29.Don't MIss It / James Blake

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2018年は二枚のシングルを発表したJames Blake。中でも『The Colour in Anything』の先の地平を切り拓くような「Don't MIss It」の衝撃は凄まじかった。2010年代は彼の時代だと言い切ることができるほど、他のアーティストに与える影響が大きいJames Blakeだが、 自分が与えた影響が返す波となって迫ってきても全く動じない孤高の存在であり続けていることが、この楽曲から伝わる。

James Blake - Don't Miss It - YouTube

 

28.Only Once Away My Son / Brian Eno with Kevin Shields

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説明不用の二人がタッグを組んで発表したアンビエント2曲。特に、ノイズ/ドローンの趣が強いOnly Once Away My Sonはとても美しい楽曲だった。ソニマニを観に行って、「ああやっぱりマイブラはロックバンドだったんだな」と確信するほど、ギターヒーロー然とした姿を見せてくれたケヴィンだったが、このコラボレーションでは自分の頭の中に浮かぶ美しい世界を完全に再現しているのではないかと思う。レコードストアデイ限定でLP化されたのも記憶に新しいが、スピーカーで流すと家具がガタガタ震えるくらい低音が意外と強くて笑える。

Brian Eno with Kevin Shields - Only Once Away My Son - YouTube

 

27.Minus / Daniel Blumberg

Minus

Daniel Blumbergがリリースした本人名義の第一作。Hebronixとして発表した音源を聴いて、DanielがYuckを辞めた理由はあまりにもハッキリ伝わった。今作はYuck脱退後の諸活動の延長線上に位置しながら、芸術家としての才能や志向するモノがより剥き出しとなった印象を受ける。影を落とすような不協和音や悲痛な歌声を聴くと、その音楽の先にある深い感情へと想像が掻き立てられる。様々な表情を見せる歌声の表現力が最大限活かされた傑作。

Daniel Blumberg - Madder (Official Audio) - YouTube

 

26.Cranberry / Hovvdy

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オースティンのインディバンドの2作目。去年のアルバムから大きく方向性は外さず、SparklehorseやPedro The Lionを想起させる一貫した音像。少し歪みのかかった、ダブルヴォイスのVo.の音響処理がとにかく好み。ナンセンスな音が一切鳴らない感覚、1曲1曲がもう少し聴きたい!というところで終わるのがハイセンスで超クール。作風自体が今作でめちゃめちゃ安定してる印象なので、次作でどう出るか更に楽しみ。

Hovvdy - Late | Audiotree Far Out - YouTube

 

25.Tongue / Anenon

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「自分のためだけに作られた音楽」みたいなものにめちゃめちゃ惹かれるんだが、今年はこのアルバムがすごく琴線に触れた。アンビエント/エレクトロニカ的なバックトラックの上をサックスが彷徨うみたいな曲が延々と続くだけのアルバムなんだが、全体の音像からは確かな説得力を感じる。「俺が気持ち良いと思うことだけを突き詰めたらこうなりました」みたいな。「部屋で一人で聴いてたらテンション上がるからこれでいいんです。」みたいな。実際知らんけども、ジャケットの通り、この世とあの世の間で鳴ってるような音楽。

Anenon - Tongue / Full Album - YouTube

 

24.Music IS / Bill Frisell

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名ギタリストBill Frisellの18年ぶり(!?)のソロ。今年も数多くのアルバムに参加していたが、Billのギタートーン、音の揺らぎを存分に楽しめたのはやっぱりソロアルバムだった。丁寧に爪弾かれる一音は、深いリヴァーヴも相まって豊かな余韻を聴き手に感じさせる。こんなふうにギターが弾けたらなぁ、こんな音楽をプレイできたらなぁと素直に思わせてくれる一枚だった。

Bill Frisell - Rambler (Alternate Version) (Official Video) - YouTube

Bill Frisell & Thomas Morgan - Full Session - 8/16/2017 - Paste Studios - New York, NY - YouTube

 

23.Silence Will Speak / GEZAN

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GEZAN『Silence Will Speak』 メンバー・チェンジして新生したバンドの、多面的な感情を束ねた〈ドキュメントの集合体〉とは? | Mikiki

インタビュー:いい加減みんな気づいてるんじゃないの?――“違和感”と対峙する、GEZAN『Silence Will Speak』 - CDJournal CDJ PUSH

次のアルバムのプロデュースをスティーブ・アルビニが手掛けること、そしてその資金を"BODY BUILDING"と称した一連のプロジェクト(ほぼクラウドファンディングみたいなもの)を介して調達すること。これらの情報が解禁されていくうちに、バンドの冒すリスクと、そのヒリヒリした緊張感に思わず唾を飲んだ。マヒトのブログやYoutubeでのライブ映像の更新を手がかりに、バンドのアメリカでの動向も細かく追うことができたが言語の通じない海外の人々を相手に、音楽一つで真っ向から向かっていく光景は何かを思わずにはいられない。GEZANがアメリカで味わった経験、見てきた景色そのものが生々しくパッケージングされているドキュメンタリーのような一枚。

GEZAN -BODY ODD feat. CAMPANELLA, ハマジ, LOSS, カベヤシュウト, OMSB - YouTube

GEZAN / DNA (Official MUSIC Video) - YouTube

 

22.2012-2017 / Against All Logic

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ニコラス・ジャーの別名義。今年最もクールに踊れる一枚ではなかろうか。どこか地下室的な冷たい響きと扇情的なループ感が両立していて、頭は冷静なまま踊れるクラブミュージックという感じがたまらん。様々な年代の楽曲をコラージュして、新たな音楽がつくり出されていく興奮を余すところなく味わえる一枚。

Against All Logic - This Old House Is All I Have - YouTube

 

21.qp / 青葉市子

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二年ぶり新譜。本作のリードトラック「月の丘」は昨年リリースされたマヒトゥ・ザ・ピーポーとのユニットNUUAMMの作品に「Moon Hill」という曲名で収録されている。今年の四月に吉祥寺キチムで行ったライブの中で、本作品の中からいくつかの新曲を披露していたが、その時は親密さを強く感じた気がする。例えば「月の丘」は青葉さんが見た夢を曲にしたものらしく、生活の延長線上にこの曲の中の世界があるんだなぁと意外に思った記憶がある。今作もクラシックギターとその唄声だけで基本的に楽曲が成り立っているが、知らない世界に引き込まれるような求心力をこのアルバムの響きからは感じる。今年リリースされたSweet Williamとのコラボ曲「からかひ」も、最高に素晴らしかったので、二人でアルバム出してほしい...。

青葉市子 - 月の丘 - YouTube

Sweet William と 青葉市子 - からかひ (Official Music Video) - YouTube

 

20.Milk / Klan Aileen

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INTERVIEW / Klan Aileen|Spincoaster (スピンコースター) | 心が震える音楽との出逢いを

5月にリリースされた3枚目。松山亮(Vo./Gt.)と竹山隆大(Dr.)の2人編成となって、現行の音楽シーンから距離をとるような独自のスタンスで制作を続けている。今作のコンセプトとして、Susumu Yokotaの『Acid Mt Fuji』を「ロックバンドでやる」というものがあったそう。とりわけリスナーに衝撃を与えたのは10分弱にわたってピアノとドラムのハンマービートが続く「元旦」というトラックだと思う。いったいどこまでマジなのかよく分からないインタビューを読んでいても、バンドの持つ癖の強さが伺える。前作よりも呪術的なVo.が前面に出ているのが、個人的には好み。

Klan Aileen - "脱獄" Live At Fever - YouTube

 

19.Ordinary Corruput Human Love / Deafheaven

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”ポストメタル”というジャンルは、この作品で一つの完成形をみたのではないだろうか...。そんなダサいことを思ってしまうような、素晴らしい完成度を誇る一枚。7曲で1時間2分。10分間を超える長尺曲それぞれが劇的な展開の末にカタルシスを感じさせる構成となっていて、バンドが操るサウンドダイナミクスをこれでもかと見せつけられる。今年出たシューゲイザーのアルバムを含めても一番なのではないかと感じる轟音パートの儚さ、その儚さを突き破った先に顕在化する激情の表現が圧倒的。

Deafheaven - "Honeycomb" - YouTube

 

18.ソングライン / くるり

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くるり「ソングライン」インタビュー|試行錯誤で見出した新たな音と手法 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー

前作から4年ぶりにリリースされた新作は、くるりの”歌モノ”サイドをまとめたような温かみを感じる作品。岸田繁の歌声が楽曲を牽引していくような、弾き語りの原型を想起させる楽曲群は、生活の中に溶け込むプレーンさを感じさせる。上記リンクのインタビューを読んで驚いたのは、それらの素朴な印象を感じさせる楽曲のトラック数が、レコーディングの最中で100を超えている点。結果的にPANを極端に振って、各トラックの音を抜けさせたとのことだが...。100を超えるトラックを、聴き手に何の違和感も感じないまま受容させることの難しさを想像すると途方もない気持ちになる。リリースした当初は極端なPAN振りからビートルズを引き合いに出した論評が数多く見られたが、先人へのリスペクトを持ちつつ、かなり意識的に現代にしか鳴らせない音像を模索するバンドの姿勢はすごくカッコいい。

くるり - その線は水平線 - YouTube

 

17.There’s a Riot Going On / Yo La Tengo

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2013年以来のオリジナルアルバム。スライ&ザ・ファミリーストーンの名盤『暴動』からタイトルを拝借している。スライの『暴動』はキング牧師の暗殺を受けた公民権運動の失速、黒人社会の混乱を、静かな怒りによって表現したアルバムだが、Yo La Tengoの『暴動』はタイトルとうってかわってあまりに優しく響く。

このアルバムは、怒りと絶望に取って代わるものを提案している。2013年の『Fade』以来、初の正式なフルアルバムとなる『There's a Riot Going On』は、自由と正気、そして感情の広がりを表現した作品で、共通の人間性とは、解放的であると同時に穏やかに話せるということを宣言した一枚となっている。
- Luc Sante, 2017年12月

Yo La Tengo - "For You Too" (Official Audio) - YouTube

 

16.And Nothing Hurt / Spiritualized

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ジェイソン=ピアースのこれまでの集大成ともいえる良作。全ての楽器の演奏をジェイソンがただ一人で手がけたとは思えない。ゴスペルやブルースの影響下にある楽曲が、地から離れる瞬間の高揚と神秘はSpiritualizedの作品群に共通する魅力だが、その感動はこの作品の中でも存分に味わうことができる。本作品を携えて行ったツアーの後半はアルバムの完全再現であることからも、作品への自信や愛情を読み取ることができた。この作品が最期なんて言わず、また新譜聞かせてほしいな...。

Spiritualized - I’m Your Man - YouTube

 

15.折坂悠太/平成

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前作『たむけ』は、忘れ去られた日本の原風景を一人の詩人が唄いあげるような、ある種のノスタルジアに溢れた作品だったように思う。まるで戦前日本の原風景を想起させるような、セピア色をした、少し掠れた写真に通ずるイメージを漂わせる前作とはうってかわって、『平成』はモダンなアプローチに溢れた傑作だ。アルバムに先だってリリースされた『ざわめき』というEPを聴いて分かるように、折坂悠太の歌声は「合奏」という形態の中でより一層とてつもないダイナミクスを獲得したように思える。ポエトリーリーディングを思わせる「夜学」など、楽曲の幅の広さにも関わらず、ほとんど声の力だけでアルバムに一本の軸を通しているのは驚き。

折坂悠太 - さびしさ (Official Live Video at FUJI ROCK FESTIVAL 2018) - YouTube

 

14.Care For Me / SABA

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シカゴのラッパーSABAによる2nd。モノクロの部屋の中で一人項垂れるSABAの姿が写されたアルバムジャケットのように、本作にはグレーがかった陰鬱な雰囲気が一貫している。SABAはシカゴの改善されない治安や、朋友の死について祈るようにラップする。エミネム『Kamikaze』収録のThe Ringerという曲では3連フロウを無闇に使用するラッパーたちを茶化すような一幕がある(しかもその3連のモノマネが上手くて笑える)が、SABAのフロウはBPMの低い緩やかな8ビートをキチンと3:3:2で分割していくような、割り算として機能するフロウで、ポリリズムの中を漂う浮遊感と2泊4泊のスネアの美味しさを両方獲得しているように思う。メロウなトラックとの相性が抜群に良い。アルバム後に発表した新曲も素晴らしい。

 Saba - LIFE (Official Video) - YouTube

Saba - Stay Right Here feat. Mick Jenkins & Xavier Omär (Official Audio) - YouTube

 

13.The Sciences / Sleep

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なんだこの『劇場版名探偵コナン』に時折挿入されるようなザ・コンピュータグラフィックは...。1月の来日公演の記憶も新しいままに、Thirdman Rechordsから突如リリースされたSleepの新譜。Sleepの音は、ジャンルを超越した独自性を獲得している。アタックが極端に潰れたGt.とBa.の音が唸りをあげて迫ってくるような体験は、他のバンドでは味わうことができないだろう。本作品も、音が波の形を成して押し寄せるような音像に圧倒されるのみ。何はともあれこのアルバム、どれだけ音を上げても全然耳が痛くない最高のサウンドプロダクションなので是非爆音で聴いてみてほしい。

Sleep - Marijuanaut's Theme - 2018 New song - YouTube

 

12. Moon River / Frank Ocean

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2016年には『Blonde』を発表し、2017年には複数の新曲を発表していたフランク。2018年はMoon Riverのカバーを発表するのみとなったが、これがとんでもなく素晴らしい。これまで何人もの人々がカバーしてきた名曲を、Frank Oceanにしか出来ない解釈で見事に再構築してみせていると思う。子供や女性を思わせるようなオートチューンの歌声にフランク自身の声が混ざり合う瞬間の多幸感ときたら…。あらゆる立場の人間、あらゆる時代の人間が唄っているような多声性にすごく感動させられた。

Frank Ocean - Moon River - YouTube

 

11.Virgin Graffiti / シャムキャッツ

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ジャケットめっちゃ痛そう...。前作『Friends Again』では4ピースバンドとして、なんの不純物も混ぜないプレーンなロックを響かせていた彼らの新境地。一年という短いスパンでリリースした新作は、Vo.夏目さん曰く「綿菓子みたい。軽くて甘くてキラキラしてる。そこにライム絞った感じ」とのことだが、この感覚が聴き手にも余すところなく伝わる快作だった。前作と比較すると楽曲の幅も多岐に亘り、かなりウワモノが追加されたようなアレンジを聴くことができる楽しさがある。

Virgin Graffiti – siamese cats official web

上記のアルバム特設サイトの中に、メンバーのオフィシャルインタビューが掲載されているが、印象的なのは藤村さんの「いわゆる『USインディーを通ってきました』的な感じじゃなくて、日本の匂いみたいなのがにじみ出るような曲が並んでてもいいんじゃないか、と。」という一言。特に菅原さんがVo.をとる曲において、80年代邦楽シーン的なニュアンスを匂わせる演奏が沢山あって新鮮だった。男の子だからBIG CARって曲が一番好き。

シャムキャッツ - カリフラワー Siamese Cats -Cauliflower (Official Audio Video) - YouTube

 

10. Skylight / Pinegrove

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元Real EstateのギターDucktailsが告発されるなど昨年から続く#Me Too運動は音楽界にも波及した。Pinegroveについても前作リリース後に贈られた様々な賛辞が忘れ去られ、バンドの評価や信頼が地に墜ちるほど、かの事件がファンに与えた落胆は大きかったように思う。作品は作品であり、作者から切り離されて考えられるべきであるものの、落胆や失望抜きにこの作品を聴くのは難しい。この作品に純粋な評価を下すのは本当に困難なことだと思う。ただ、それもこの作品の聴かれ方/受容のされ方として全然アリなんだと思うようになった。問題の経緯については以下のリンクがとても詳しく情報をまとめて下さっている。

[FEATURE] 寛容と共存〜Pinegroveと新作『Skylight』について | Monchicon!

前作は二つの四角形が交わるようなジャケットで、その図形が象徴するような音楽性の親密さにいたく感動したのを憶えている。今作のジャケットは中央に水色で塗りつぶされた四角形が一つ。下地に赤色が微かに見える。ジャケットの外周にも大きな四角形を認めることができる。この作品は前作のように他者に対して開かれた親密さではなく、Evanが直面した孤独について、そして自分を包み込むあらゆる存在への祈りが込められているように思う。

 

09. 무너지기(Crumbling) / 공중도둑(Mid-Air Thief)

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昨年、"公衆道徳"名義で発表した作品が話題となった韓国の宅録アーティストの新譜。新たな名義は"空中泥棒"で、前作同様Lamp主宰のレーベルBotanical Houseから国内盤がリリースされる。今回の作品には同じく韓国の宅録アーティストSummer Soul(19歳!)が参加。情報量の多い楽曲が並んでいるのは前作同様だが、森は生きているとCorneliusを掛け合わせたようなプログレ的とも言える曲の展開、立体的な音の組み立てには驚くばかり。ライブしたりしてたら見てみたいな。

공중도둑(Mid-Air Thief) - 무너지기 (Crumbling) (2018) [Full Album] - YouTube

 

08.(after) / Mount Eerie

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『Crow Looked At Me』『Now Only』の楽曲をクラシックギターで弾き語るライブ盤。Mount Eerieの近作は、失った妻に対するあらゆる感情の真摯な吐露に終始している。それは歌にするにはあまりにパーソナルなことだったり、彼らと時間を共有していないものにとっては意味が取り辛く退屈に感じられることもある。しかしそれらすべての瞬間が彼女自身だったのだろう。失った存在を忘れてしまわないと自分が壊れてしまうものの、自分が忘れてしまうとその存在はどうなってしまうのか分からない。圧倒的なジレンマの中を彷徨うPhilの歌声は、元の音源にはないリバーヴ感とともにいつまでも胸に残る深い哀しみ聴き手に感じさせる。

Mount Eerie - (after) [full album] - YouTube

 

07. A Brief Inquiry Into Online Relationship / The 1975

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1stから2ndの音楽的深化にも驚いたが、今作の衝撃はそれを遥かに上回る。夜の街のネオンが似合う耳ざわりの良いポップスを並べた1stから、R&Bの流れを取り込んだ2ndへの歩みをみれば、彼らが優れた耳を持ち、聴いた音を再現する力に長けていることが理解できるだろう。しかしそのカメレオン的な姿勢と、バンド自体のキャラクターが相まって、いわゆる"ハイプ"的な扱いを受けていることも多々あったように思う。今作はその"ハイプ"さを突き詰めに突き詰めた、皮肉の効いた傑作。前作までの音楽性を引き継ぎながらアンビエントやテクノを取り込んだ楽曲や、Bon Iverさながらオートチューンをバリバリ効かせた楽曲をごった煮のようにアルバムにぶち込む節操のなさ(褒め言葉)には驚くばかり。一つ一つの模様を切り取ってみればどこかでみたようなものだが、その種類が何十、何百と組み合わせを増していくごとに凄みを帯びてくる。最初は可愛らしかった小さな怪獣が、周りの怪獣を食べていくうちに本当に手のつけられない化け物になっていくような怖さがこのバンドにはある。

The 1975 - Sincerity Is Scary (Official Video) - YouTube

 

06.Yawn / Bill Ryder-Jones

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バカみたいなジャケットが好きすぎる...。元Coralのギタリストのソロ第4作。これまでの作品もすごく良い作品だったが、今作は間違いなく最高傑作。Red House Paintersを彷彿とさせるスロウコア/サッドコア的な広がりのある音響に、どこか諦観を感じさせるVo.が最高にクール。そのくせギターの音がマジで感傷的で、そのギャップというかバランス感覚に完全にやられた。ともすれば懐古的ともとられてしまうノスタルジックな音像を、高い楽曲の完成度と歌メロの良さで聴かせ続ける硬派な一枚だった。

Bill Ryder-Jones - And Then There’s You (Official Video) - YouTube

 

05.Old Days Tailor / Old Days Tailor

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OLD DAYS TAILOR インタヴュー―〈日本語で歌うこと〉への挑戦 | Mikiki

笹倉慎介、伊賀航、岡田拓郎、谷口雄、増村和彦、濱口ちな、優河といったメンバーからなるスーパーグループの1st。果たしてこれが2018年に出た音源なのかと疑うほど、普遍性の高い心地よさを備えた楽曲が連続する。メンバーの錚々たる顔ぶれを見ても分かるように、先人たちの音楽への多大なリスペクトを感じる音楽性ながら、どんな季節であれ、どんな時代であれ寄り添ってくれる親密さも感じる名盤だった。このアルバムの中に「昔から 何もない海を見ていると なぜだかありもしない記憶に 胸がきしむのです」という歌詞があるんだが、それがとてつもなく好きで...。おじいちゃん家の裏の海を見ていたことをブァッと思い出したよ...。

OLD DAYS TAILOR - 晴耕雨読 - YouTube

 

04.Sleep Like It's Winter / Jim O'rourke

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生涯で最も好きなアンビエントアルバムかもしれん。俺の知らない聴覚が目覚めるのを感じる。聴覚が目覚めるってバカみたいな表現だけど、今まで認識していなかった音を聴くことが出来ているみたいな感覚にもっていってくれるアンビエントって初めてかもしれない。とにかく高音も低音も音が”廻る”時のトレモロ感が最高で、これはもうお耳にとっての幸福体験をもたらすお薬に近い。不穏なイントロから始まり、特にアルバム20分過ぎからの仄かな光が差すような展開はものすごく劇的。タワレコのインストアと青山のレコ発両方いったけど、全身に鳥肌立ちまくりの壮絶な体験が出来た。レコ発はアルバム音源を拡大した90分以上のライブ。録音して持って帰りたいくらい圧巻のライブだった。

Jim O'Rourke - Sleep Like It's Winter - YouTube

 

03.WHALE LIVING / Homecomings

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アルバムを年間ベストに選ぶ基準は”ああこれは一生聴くなぁ”という確信に近い直感が頼りな気がするが、このアルバムは誇張なしで本当に一生聴くと思う。今までの舌足らずな感じのする英詩のイメージが、良い意味で覆された。『リズと青い鳥』を見た時に、あぁ素敵な曲と思ったSongbirdsがラストにくるのも最高。なんかもう「良い映画観た~みたいなアルバムでめっちゃ幸せになるんだよね~」という、ギャルみたいな感想しか出てこない。若き荒井由実を思わせるエヴァーグリーンな雰囲気に脱帽。そしてLPでの発売を熱望(押韻)。

Homecomings "Blue Hour"(Official Music Video) - YouTube

Homecomings - Songbirds(Official Music Video) - YouTube

 

02.Twin Fantasy / Car Seat Headrest

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これはもう言葉が要らないでしょう...。一聴しただけで全てが分かる。瑞々しいとしか言いようのない各パートの重なり、サウンドの妙よ…。Bodysとか初聴きの時たまげたな…。ドラムの音が半端なく良い。2011年のオリジナル音源と聴き比べても、ウィル・トレドの遂げた圧倒的な飛躍がすぐ分かる。国内盤解説は珍屋の松林さんが手がけているが、その解説が本当に詳細で素晴らしい。買うなら絶対国内盤。「うっわこれ良い曲だな…ってまだBeach Life-In-Deathかよ」は聴いた人全員がたどる道…そしてFamous Prophets(Stars)で全員果てたはず…。ロックは死んでいないぞ…。

Car Seat Headrest - "Beach Life-In-Death" (Official Audio) - YouTube

Car Seat Headrest - "Famous Prophets (Stars)" (Official Audio) - YouTube

 

01.針の無い画鋲 / 土井玄臣

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大人になって聴いていて筋肉に力が入らない音楽が好きになった。今年はこのアルバムを本当によく聴いた。自分の今日を認めて、明日を静かに祈りたい時にここまで生活に溶け込んでくれる音楽はなかったように思う。何事も起きない繰り返しの毎日の中で、少しでも虚しさを感じた時に、このアルバムに沢山救われたように思う。エリオットスミスは、マスタリングの際に低音域をかなり意識的にカットして声から肉体性を排除していた、みたいな話を読んだことがあるが、この作品のファルセットからもおしつけがましい”肉体”の存在は一切感じない。アルバムラストを締めくくる「マリーゴールド」まで、ドラムのビートは一切なし。一人でいる時にぽつんと浮かんでくるとりとめのない考えのように、自分の近くにずっとある、そんな音楽が結局一番良い。

土井玄臣 - ハート / Motoomi Doi - Heart - YouTube